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主に読書メモ フーコーは読んだことないです

福間良明(2020)『戦後日本、記憶の力学』序論

継承=忘却?

 戦争の記憶を継承することが叫ばれている。しかし、その一方であえて継承されない記憶について語られない。ありていに言えば、不都合な事実は伏せて、記憶を継承していき、調和的な美しい物語を提示していくということだろう。福間は戦争映画の変遷を例に語っていく。かつては、「兵隊ヤクザ」など軍上層部の腐敗を告発する映画が存在していた。しかし、最近は「永遠の0」など、兵士への共感を強調する映画が増加している。つまり、戦争の記憶から、「軍上層部への怒り」が欠落していっているのである。

 戦争映画の変遷からも分かるように、記憶の継承は、同時に「何を継承しないか」、すなわち「忘却」も意味するのである。